福岡【平屋の注文住宅を建てるポイント】解説

最近、平屋の注文住宅が注目されています。住宅の着工数における平屋の割合は右肩上がりで年々高くなっており、2019年には1割を超えました。子供が独立した後の夫婦二人の住まいとしての需要は以前からありましたが、最近では子育て世代でも人気が高まっています。今回は平屋に注目し、メリットやデメリットなど建てる際のポイントをわかりやすくご説明します。

そもそも平屋とは

平屋とは一階建ての家のことです。二階建てに比べ、階段がなくワンフロアとなっているのが特徴です。日本では長い間住まわれてきたかたちで、どこか懐かしさを感じる方が多いのではないでしょうか?

冒頭でお話した平屋の人気について、国土交通省の建築着工統計調査によると、1年間で建てられた居住専用住宅のうち、平屋の割合が2011年の6.52%から2021年の12.48%と10年で約2倍近くにまで大きくなっています。このグラフからも分かるように、家を建てる際に平屋を選択する方が増えています。

平屋住宅着工棟数グラフ

国土交通省 建築着工統計調査より作成

平屋のメリット

では平屋にはどんなメリットがあるのか一つずつご説明していきます。

階段がないワンフロアの空間

2階建ての住宅では階段の面積は約1坪、1・2階合わせると2坪になります。平屋には階段は必要ありませんので同じ面積で考えると2坪分部屋を広くすることができます。もしくは2坪分家を小さくできるとも言えます。面積を無駄なく使えることがメリットとなります。

また足腰が弱ってくる高齢期を過ごす家として、また、小さな子供が落下する危険がないなど階段がなくワンフロアの家は安心です。将来車いすが必要になったとしても、バリアフリーにしやすいことも特徴です。家事においても、洗濯物や掃除で階段の上り下りがないため、楽に行えるでしょう。

自由な間取りやカタチが計画しやすい

2階建ての場合だと1階は2階を支えているため、耐震性を考えると柱や壁の位置を上下階なるべくそろえる必要があります。つまり1階は2階の間取りによる制限を受けてしまうのです。しかし平屋は屋根だけなので構造的な制限が少なく自由に計画しやすくなります。建物の形状もL字型やコの字型など敷地の形状や周辺環境により、おもしろいカタチをつくりやすくなります。

室内では2階がないため、天井の高さが自由で、屋根のカタチに合わせた勾配天井とすることもできます。

また屋根の高さによってはロフトをつくるなど、ちょっとした遊び場や収納空間を計画することもできます。

地震や台風に強い

地震や風は高い建物ほど影響を受けやすくなります。つまり2階建てと比較すると平屋の方が有利と言えます。また火災などもしもの時の避難を考えると、平屋の方がすばやく外に逃げられます。

メンテナンスのしやすさ

住宅にはメンテナンスが付き物ですが、2階建てでは足場をかけないと屋根や外壁のメンテナンスができません。その点平屋の場合は半分の足場で良かったり、がんばれば自分でDIYというのも可能です。また日常の点検もしやすいこともメリットです。

またしっかりと屋根の軒を出してあげれば、雨に塗れる範囲が少なく、外壁や窓の汚れや劣化を遅らせることができます。

庭とのつながり

外に出られる窓をつければどの部屋も庭とつながります。生活の場を外まで広げることで、豊かな生活を送ることができます。

深い軒下空間やウッドデッキ・テラスなどでいろんなことが楽しめます。


平屋のデメリット

今度はデメリットについていくつか紹介します。

眺望

立地によりますが、2階建てに比べて眺望については不利になります。2階建ての多い住宅地だと窓からはお隣の家の壁しか見えないということになるかもしれません。

コストアップに

2階建てと同じ面積の平屋を比べた場合、屋根と基礎の面積が2倍になるため、平屋の方が割高になってしまいます。

ただ実際は階段のあるなしや構造体の太さの違いなどもあるため、どこまでの差になるかははっきりとはわかりませんが、あくまでも屋根と基礎だけを考えると平屋の方がコストの面では不利になります。

窓が少なくなる

マンションを考えると分かりやすいかもしれません。角部屋は2方向に窓がとれるのに対し、その他の部屋は1方向しかとれません。2階建ての方が角部屋をつくりやすいため、明るさや風通しにおいて不利になります。また、家の真ん中あたりの部屋では窓から遠く、暗くなってしまいます。

しかし、建物のカタチをL字やコの字型などに変えることで窓をつけられるように工夫したり、天窓をつけて上から光を取り込むことで解決することができます。

防犯について

平屋の場合、外部から侵入しやすい窓が多くなってしまいます。2階の窓なら、開けていても簡単には入れませんが、1階はそうはいきません。そこで大きな窓には割れてもひびがはいるだけの防犯ガラスを採用したり、周りから死角になるような場所は窓の外に格子を付けたり高い位置に窓をつけるなど工夫が必要です。また雨戸やシャッターをつけることも効果的です。


平屋を建てる際の注意点

土地の余裕が必要 

例えば30坪の広さの家を計画する場合、2階建ての家なら1階の面積が最低15坪となります。土地にはそれぞれ建てられる面積の限度が決まっており、この割合を建ぺい率と言います。建ぺい率が50%の土地であった場合、2階建てでは最低30坪の広さが必要であるのに対し、平屋では60坪必要になります。

土地の価格が高まっていることや広い土地が少ないことから2階建ての家が多くなっているのが現状です。

土地のカタチと方位

家にとって方位は重要な要素です。では南北に長い土地と東西に長い土地どちらが日当たりがよいでしょうか?

答えは東西に長い土地です。理由は家のカタチも東西に長くすることで南側の窓をたくさんつけられるからです。南北に長い土地の場合、東西に窓が多くなり、部屋の明るさが朝と夕方のどちらかに偏ってしまいます。

2階建てならば、南側の窓を1・2階でつくることができるので、その分明るい部屋を多くつくることができます。

土地のカタチによって平屋が不利になることがあるので注意が必要です。

周りの家と日当たり

先ほどは土地のカタチによる日当たりの話でしたが、周りに建つ家の影響も十分注意が必要です。南側に大きな窓をつくっても、お隣の家の影になってしまっては部屋が暗くなってしまいます。2階建ての家が多いとその分日当たりが悪くなりますので、日差しが確保できる距離が取れるかどうかしっかりと確認しましょう。

日当たりの確認をする際、季節も重要です。夏と冬では太陽の高さが違うため、影の範囲も大きく異なります。冬至の太陽の角度はおよそ30°です。目の前の家の高さが6mだとすると、約10m離す必要があります。

屋根の断熱

平屋はすべての部屋が屋根に面しているため、日射の影響を受けやすくなります。最近主流のガルバリウム鋼板の屋根は特に熱くなるので、屋根の通気と共に断熱材をしっかりと入れる必要があります。平屋の場合は2階建ての家よりも屋根の断熱に注意が必要です。

事例紹介

最後に平屋の事例を紹介します。

住宅地でありながら、南側は畑で東西に長い土地とかなりの好条件でした。家族3人暮らしのコンパクトな住まいがご希望で、平屋ならではの勾配天井とロフトが特徴です。暗くなりがちな中央部には天窓を設けて明るさを確保しています。木の温もりや自然素材の塗り壁により、快適でほっと落ち着く家です。

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