自然の暖房。冬あたたかく夏も快適な家にするための窓の選び方

寒さがだんだんと厳しくなり、暖房器具が欠かせない季節になってきました。暖かい家は誰もが求めるものですが、電気代が気になるところです。今回は窓を上手に選ぶことで無料で暖房が得られ、冬あたたかく夏も快適にする方法をご紹介します。

自然の暖房とは何かというと、ずばり太陽の熱です。外が寒くても日差しにあたるとぽかぽか暖かいですよね。たくさん取り込んで、逃げる熱を少なくしてあげれば、エンルギーを使わず部屋が温まるというわけです。つまり、窓から入る熱と窓から逃げていく熱を理解し、窓を上手に選び配置することで、入る熱の方を多くしてあげるというものです。

断熱性能をあらわす熱貫流率(U値)

最初に熱を理解するためには熱貫流率という言葉が大事になってきます。
熱貫流率(U値)とは熱がどのくらい移動するかをあらわす値です。

この数値が小さいほど熱が移動しにくく、断熱性能が高いということになります。

W/(㎡・K)

W:ワット 熱が移動する速さの単位

㎡:窓や壁の面積

K:ケルビン 外と室内の温度差

1m×1mの正方形の窓を温度差1℃の時に移動する熱の速さが熱貫流率ということになります。

窓から逃げる熱

では実際にどのくらいの熱が逃げるのか計算してみます。

窓の面積:1.65×2.00=3.3㎡

温度差 :20-5=15℃

熱=熱貫流率 × 面積 × 温度差
 =3.49 × 3.3 × 15
 =172.75W

1日で考えると172.75×24=4146Wh

1日で4146Whの熱が窓から逃げていくことになります。

分かりやすく例えると1000Wの電気ストーブを4時間付けたのと同じ熱が逃げたことになります。言い換えれば20℃をキープするにはこれだけの熱が必要となります。

この計算式から窓の面積が大きいほど、また温度差が大きいほど、熱が移動しやすくなるということがわかります。

ガラスの種類による比較

先ほどはペアガラスで計算しましたが、今やガラスは進化しており、より断熱性の高いガラスが開発されています。LowE(ローイー)やアルゴンガス入り、トリプルガラスなど一度は聞いたことがあるかもしれません。ガラスの違いでどのくらい逃げる熱に差があるかまとめてみました。

ガラスの種類価格熱貫流率1日に逃げる熱
サーモスL ペアガラス110,2003.493344
サーモスL LowEペアガラス134,8002.332232
サーモスX LowEペア+アルゴンガス194,8001.521456
サーモスX トリプルガラス+アルゴンガス296,2001.111063

※サイズ:16520 室温:20℃ 外気温:福岡の冬の平均気温7.9℃ 価格・熱貫流率はメーカーカタログより

価格に関しては工事費を含まない定価なので実際とは異なりますが、金額にほぼ比例して性能が高くなってます。窓一つでこれだけの差が出てきてしまいます。

窓から入ってくる熱

今度は太陽による窓から入ってくる熱について計算してみます。

ガラス当たった日射熱はすべて入ってくるわけではありません。ペアガラスの場合は63%が入り、37%は反射します。この割合を日射取得率といいます。この値はガラスの種類によって異なります。

それでは窓は先ほどと同じ16520のペアガラスで福岡の南面の冬の1日平均日射量を元に計算します。

面積:3.3㎡
1日の日射量:2660Wh
日射取得率:0.63

入ってくる熱=3.3×2660×0.63
      =5530Wh

1日に窓から先ほどの電気ストーブ5時間半分の熱が入ってくることになります。これが今回の自然の暖房の正体です。

ガラスの種類と方位による比較

ガラスの種類により日射取得率に違いがあると言いましたが、詳しく説明するとLowEガラスには熱を反射させるフィルムが貼ってあり、二枚のガラスのどちらに貼るかで日射取得型と日射遮蔽型の2種類に分かれます。また窓は南だけではないですから、当然東や西も考慮する必要があります。それでは福岡の冬の条件でガラスごとの1日に入ってくる熱をまとめました。

ガラスの種類日射取得率入る熱(東西)入る熱(南)
ペアガラス0.6329725530
LowE日射取得型0.5124064476
LowE日射遮蔽型0.3215102808
トリプルガラス日射取得型0.4722174125
トリプルガラス日射遮蔽型0.3014152633

※ サイズ:16520 福岡の冬の1日平均日射量 日射取得率はメーカーサイト より

入ってくる熱は断熱性能が低い窓ほどたくさん得られます。方位については東西の窓は南の窓に比べ約半分程度となってます。

入ってくる熱と逃げる熱どっちが多い?

入ってくる熱から逃げていく熱を引いた値をガラスの種類と方位の違いによりまとめました。

ガラスの種類東西
ペアガラス-3572185
LowE日射取得型 1732243
LowE日射遮蔽型 -722576
LowE+アルゴンガス日射取得型 9503020
LowE+アルゴンガス日射遮蔽型 -401352
トリプルガラス日射取得型 11543061
トリプルガラス日射遮蔽型 3511569

南側の窓ではガラスの種類に関係なくすべてプラスとなりました。特にペアガラスと日射取得型が大きく熱を得られます。東西については日射量が少ないためペアガラスと日射遮蔽型でマイナスとなりました。トリプルガラスでは熱が逃げにくいため東西の日射遮蔽型でもわずかにプラスとなっています。

この結果をみると東西の窓よりも南の窓を大きくすることで、自然の暖房を得られる効果が高いことが分かります。ではすべての窓を日射取得型にすればいいのではと思われるかもしれませんが、夏のことを忘れてはいけません。次は夏の快適性についてです。

夏を快適に過ごすための工夫

冬は日差しをできるだけ室内に取り込みたいですが、夏は逆に遮りたい。一般的な住宅においては窓から侵入する熱は全体の70%以上になります。つまり窓からの熱の侵入を抑えることが、最も効果的で重要です。まずはガラスの種類によってどのくらいの日射が入るかまとめました。計算式は冬の窓から入る熱と同じです。

ガラスの種類日射取得率入る熱(東西)入る熱(南)入る熱(北)
ペアガラス0.63559245323679
LowE日射取得型0.51452736682978
LowE日射遮蔽型0.32284023021869
トリプルガラス日射取得型0.47417233812745
トリプルガラス日射遮蔽型0.30266321581752

※ サイズ:16520 福岡の夏の1日平均日射量 日射取得率はメーカーサイト より

冬とは逆で東西から入ってくる熱が多いことが分かります。これは太陽の角度が影響しています。夏の昼間は太陽はほぼ真上にいますので、部屋の中では日が当たる範囲が狭くなってるはずです。そして、北側の窓からもしっかり熱が入ってくることも分かります。北側に大きな窓をつけることは少ないでしょうが、対策は必要です。

夏の日差しをどうやって遮るか

みなさんの家では窓に何をつけていますか?カーテンやロールスクリーン、障子など様々あると思います。日差しを遮る工夫でどのくらい違いが出てくるかまとめました。

ガラスの種類窓だけ障子外付ブラインド
ペアガラス559226631242
LowE日射取得型452726631065
LowE日射遮蔽型28401864798
トリプルガラス日射取得型41722663976
トリプルガラス日射遮蔽型26631775710

※ サイズ:16520 福岡の夏の東面1日平均日射量 日射取得率はメーカーサイト より

普段の生活で窓は目隠しのためカーテンなどされていると思いますが、障子に近い数値になると思います。窓だけより約半分になっています。さらに外付ブラインドだと約1/4に。すだれやシェードでも同じです。つまり日差しによる熱を遮るのに窓の内側よりも外側でカットさせると効果が大きいことが分かります。

冬と夏の結果を整理

冬の場合と夏の場合で窓からの太陽の影響を説明しましたが、整理してみます。

すべての窓から24時間熱は逃げている

断熱性能の高い窓を選ぶ

南の窓から入る熱が多い

南側の窓を大きくする
南側は日射取得型のガラスを選ぶ

東西の窓から入る熱が多い

東西の窓は小さくする
東西は日射遮蔽型のガラスを選ぶ

日差しを遮ると入る熱も減る

窓の内側よりもできるだけ外側で遮る

南側の日射は屋根の長さで調整してあげると、効果的です。夏は遮り、冬は入るのでガラスを日射取得型にしても夏の日差しによる熱をカットできます。東西は太陽が低いため、屋根では遮ることができません。格子やすだれ・シェードなどで対策が必要です。

まとめ

窓の大きさやガラスの種類そして方位によって熱の入り方は様々です。上手に選べば太陽の熱で暖房することもできます。逆に間違えば夏は暑く、冬は寒いといったことにもなりかねません。地域の気候を読み取り、きちんと設計すれば冬も夏も快適に過ごせる家になりますよ。

補足

今回の数値については福岡のある地点での気温と日射量を元に計算しています。場所が変われば数値も変わるので、地域によって設計の考え方は変わります。また窓からの熱の出入りに着目した話でしたが、壁や天井からも熱の出入りはありますし、窓からの風通しも快適性に関わります。窓を大きく開ける方位も土地によって様々です。家の設計はいろんな要素を考えた上で行いますので今回の結果が必ずしも正解とは限りません。土地や気候を読み取って最適な設計をすること一番大事です。

参考文献:省エネ・エコ住宅設計究極マニュアル
データ元:気象庁HP 過去の気象データ
     NEDO 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
         年間月別日射量データベース
     LIXIL HP 製品データ

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