
古い家をリノベーションするか建て替えて新築にするか、家づくりを考える時悩まれる方がいると思います。どちらもメリットデメリットがあり、またそれぞれできるできないもあります。
新築とリノベーションを考える上でそれぞれ特徴をまとめました。ぜひ参考にされてください。
※リノベーションに関して法律改正後の国の解説等により内容を一部変更しています。2025.11.10
- 新築ができない場合
- リノベーションの注意点
- 建て替え(新築)とリノベーションの比較
- 新築のメリット
- 新築のデメリット
- リノベーションのメリット
- リノベーションのデメリット
- 新築とリノベーションの判断基準
- まとめ
新築(建て替え)ができない場合
・道路に2m接していない
建築基準法では道路と最低2mつながっていなければならないという決まりがあります。
旗竿地のような道路から通路が伸びて、奥で広くなっているような形の土地の場合、その通路の幅が最低2m必要ということです。また道路に接していても道幅が狭かったり私道だと道路と認められていない場合もあります。
・家の建築を制限されている土地
都市計画で市街化調整区域に指定されている地域では家が建てられない場合があります。元々家があれば建て替えができたり、限定的に建てられるエリアがあったりと例外はあります。
不動産情報で良く資材置場に最適といった言葉がりますが、まさにそれが家が建てられない土地という訳です。市役所やインターネットでも調べることができますが、家が建てられるかどうかは建築士に相談することをおすすめします。
リノベーションの注意点
・建築確認申請や検査の記録がない
リノベーションとはリフォームと違い、間取りや窓の位置が変わるなど大掛かりな変更のことを指します。2025年4月からは平屋の200㎡以上と2階建て以上の建物をリノベーションする場合は建築確認申請の届け出が必要になります。※工事内容により届け出の有無が決まります。
ここで問題なのが家が新築された時にきちんと手続きがされているかどうかです。手続きを行っていなかった場合リノベーションして法律に合った建物に変えれば良いと思うのですが、まず手続き違反による行政指導を受けなければなりません。具体的には建物に法律違反がないかすべてチェックし、行政に報告・検査してもらうことになります。家によってはこの作業がかなり難しい場合があるため、リノベーションを断念せざるを得ないことが多々あります。
古い家が新築された時にきちんと手続きが行われていれば、スムーズに計画ができたり、問題なく新たな建築確認申請が出せます。ただし手続きの記録がない場合、当時の法律に適合しているかをまず調査しなければなりません。なので調査費用が発生します。調査の結果、法律に適合していないところがあればリノベーションの工事と一緒に正しく変更させることで計画が可能となります。
また、すべてのリノベーションが建築確認申請の対象という訳ではありません。
例えば屋根を下地ごとやり直したり、階段の位置を変更するなどは対象となりますが、当時の法律を守っていることが確認できれば緩和措置があるので、建築確認申請の対象でない工事に関しては現在の法律の基準を満たしていなくてもそのままで良いことになっています。
ただし一つ注意があります。リノベーションで住宅ローンを利用される場合は銀行によっては建築確認申請の書類が必要になる場合があります。つまり過去に手続きの記録がなければ、その書類を準備することができませんので借りられないケースもあります。なので建築確認申請の対象工事を行いリノベーションで確認済み証や検査済み証を取得する必要があります。記録の有無で手続きが増えることになりますので注意が必要です。
新築(建て替え)とリノベーションの比較
新築とリノベーションどちらも可能な場合に、ではどちらが良いのか。それぞれメリット・デメリットをまとめてみました。

新築のメリット
・間取りやカタチが自由
土地によって面積の制限はありますが、その中では自由に計画することができます。
・高い性能が確保できる
断熱性や耐震性など昔に比べると技術や材料の進歩、性能の向上により、より高い性能を確保しやすくなります。
・金額が把握しやすい
新築の場合は1から作り上げるので、予期せぬ追加費用はほとんどありません。
新築のデメリット
・コストアップ
リノベーションと比べるとすべての材料費と工事費がかかる分コストは高くなります。
・固定資産税が上がる
新築時が最も高く、年数によって徐々に下がっていきます。土地の固定資産税は道路の価値によるので年数は関係ありません。増築や減築を伴うリノベーションでは固定資産税が見直される場合があります。
・地盤補強や改良が必要なことも
新築では地盤調査が必須となっています。そこで軟弱な地盤だと判定が出ると、地盤補強や改良が必要となり100万円以上の大きな費用がかかる場合もあります。
リノベーションのメリット

・古材による雰囲気
今では手に入らないような立派な材料や年月による美しい風合いなど、古材に価値を感じられる方には大きなメリットです。
・家族の思い出を残す
家族と過ごした家や祖父母の家など大切にされてきた家や思い出を残すことができます。
・使える部分は残してコストダウン
屋根や外壁・構造体など状態が良ければ残すことで、コストを下げることができます。
またサイズを合わせることができれば古い障子や引き戸なども再利用できます。
・暮らしがイメージしやすい
新築と違い実際に家の中に身を置くことができるため、窓からの景色や風通し・日当たりなど確認しやすいのが特徴です。さらに住んだことがあれば、改善したい点も良く分かり、より暮らしやすい家となるでしょう。
リノベーションのデメリット
・性能が確保しづらい
断熱性能に関しては内側から断熱材を入れたり窓を交換したりとある程度確保できますが、耐震性に関しては構造体や基礎は補強という方法になる場所があり、新築のような正確な性能値というのは難しくなります。ただしこれまで問題なく建っているという実績は新築にはないメリットかもしれません。
・解体に時間と手間がかかる
新築時に古い家があれば解体費用がかかりますが、リノベーションでは残しながら壊すため、より時間と手間がかかります。
・状態により追加費用の可能性
工事前には発見できなかった、劣化や欠陥が見つかることがあります。解体をした後でしか見られない場所があるため予測が難しく、放置できないものであれば追加費用が必要となります。
・火災保険の加入が難しいことも
家が古いため新築よりも災害によるリスクが高いとされ、新たに保険をかける場合は、保険会社によりますが条件が厳しかったり加入が難しいことがあります。
・間取りの制限
重要な柱や壁などは残しながらの計画になるので、どうしても間取りに制限があります。
その中でより良いプランをつくっていくのが設計の腕の見せ所ではあります。
新築とリノベーションの判断基準

新築とリノベーションそれぞれメリット・デメリットを紹介しましたが、
人それぞれ価値観が違い、家や土地の状況は様々なので、何を大切に考えるかでどちらが良いかは変わってくると思います。
それでもどちらが良いか悩むという方へ、判断に役立つ知識をお伝えします。
・築年数
1981年に耐震性能に関する法改正がありました。以前の建物は耐震性能が低い可能性があるため、耐震補強が必要なことが多いです。そのためリノベーションをするなら1981年以降に建てられた建物がおすすめです。古い家の耐震性能がどのくらいなのかは耐震診断をすることで把握できます。お住いの市町村でサポートがあると思いますので活用してみてください。
福岡市の場合→耐震診断アドバイザー派遣制度
・基礎の状態

これも耐震性に関わる部分ですが、基礎が弱かったり、石の上に載っている状態の家は基礎をつくったり補強するために床をすべて撤去する必要があり、かなり大掛かりな工事となります。
新築並みに費用がかかる場合もあり、コストの面でリノベーションはあまりおすすめできません。
・確認申請の手続きの有無と増築について
確認申請の記録については役所で調べることができます。増築を計画する場合、確認申請の手続きの有無で対応が変わります。記録がある場合、増築部分のみを現在の法律に合わせれば良いため、既存部分に関してはそのままで良いことになります。
一方記録がない場合はまず当時の法律の基準に合っているかを調査しなければなりません。もし基準に満たない部分や違反している部分があれば現在の法律に合わせなくてはなりません。耐震性能だけでなく断熱性能も対象なので家全体をフルリノベーションをすることになります。
また増築にはカーポートの屋根も含まれます。場合によっては面積オーバーで違反の状態になっている可能性があります。建築士に相談することをお勧めします。
まとめ
新築にするかリノベーションにするか色々紹介しましたが、参考になったでしょうか?
どちらにも良い点があり判断は私たちプロでも難しいことがあります。大切にしたいことや建物の状況により、どちらが良いかは変わりますので、実際には新築・リノベーションどちらもされている建築士に相談してみてください。
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