戸建てリノベーション向き物件の選び方

ここ数年でリノベーションのお問い合わせが増えてきました。
今住んでいる家で不便になったところや困っているところを改善させたいという方や
中古物件を購入して暮らしやすい間取りに変えたいという方などいらっしゃいます。

具体的な目的については「暑さや寒さを解消したい」というのが一番多いです。

その他は地震に対する心配・昔の間取りが今の生活に合わなくなった

などリフォームでは満足できず大掛かりなリノベーションで
根本的な住まいの改善を望んでいる方が多いです。

リノベーション向き物件の選び方

新築とは違い、残すものと新しくするものがあるので、
その分コストを抑えることができるのがリノベーションのメリットの一つです。
しかし、物件によってはリノベーションが難しかったり、
家の骨格に交換や補強が必要で予想外のお金がかかったりすることがあります。

ではどんな物件がリノベーションに向いているのでしょうか?

希望のエリアや周りの環境などは好みがあるでしょうから、
住みたいかどうかは大前提としてあります。

それとは別に家の性能や構造についてリノベーションができるかどうか
という点でのリノベーション向き物件の選び方のポイントを紹介します。
購入前にぜひチェックして参考にしてください。

築年数について

家の築年数によって耐震性の基準が変わるので注意が必要です。
1981年(昭和56年)6月に新耐震基準が施行されました。
震度6~7の地震で倒壊しないというものです。
旧耐震基準の家は耐震性が低い可能性が高く、耐震補強が必要になるかもしれません。

耐震補強の方法としては、
・壁の補強
・基礎の補強
・屋根を軽くする
などがあります。

築年数の調べ方は、中古物件なら不動産屋さんに聞けば教えてもらえます。
またご自宅の場合は法務局で建物の不動産登記情報を調べると分かります。

壁の補強

壁の補強とは、柱と柱の間に斜めの板を入れたり、合板を張ったりして地震に耐える強い壁をつくることです。これを耐力壁と言います。建物の大きさや広さによって必要な耐力壁の数が決まり、さらにバランスよく配置させなければなりません。

耐力壁の工事をするには内側の壁を剥がす必要があります。リノベーションで断熱材を入れ替えする場合は耐震補強と断熱補強を同時に行うことができます。

基礎の補強

基礎の補強とは、床下のコンクリートの部分の補強のことです。
床下を覗いて土の場合は布基礎、コンクリートの場合はべた基礎となります。

新耐震基準以前の建物はほとんどの場合が布基礎です。
地盤が弱い土地ではべた基礎の方が有利に働きます。

地盤が安定した土地では布基礎で十分問題ないのですが、
鉄筋の入っていない、無筋コンクリートと呼ばれる基礎の場合は、
建物と基礎のつながりが弱く、地震で浮いてしまい、大きな被害を受ける可能性があります。

地盤の弱い土地では床下をコンクリートのべた基礎に変えたり、
無筋コンクリートの場合は鉄筋コンクリートでの補強が考えられます。

屋根を軽くする

屋根を軽くすることも耐震性を高めるためには有利です。
背が高いほどまた頭が重たいほど揺れが大きくなります。

2階建てより平屋、瓦屋根よりも金属などの軽い屋根の方が、地震の影響が小さくなります。

昔の瓦屋根では瓦の下に土を敷いている工法が主流でした。
瓦の重さに加え土の重さも加わるため、かなり重たくなっています。

今では防災瓦といって、一枚一枚を釘で留める工法が主流ですので、
昔と比べ、軽くなり、瓦も落ちにくくなっています。

瓦からガルバリウム鋼板といった金属の素材に変える方法もあります。
軽くなるため、地震には強くなりますが、耐久性の面では瓦の方が優れています。

耐震診断

お住いの地域の行政サービスを利用して耐震診断を受けることができます。
福岡の場合は一般診断を6000円で行ってもらえます。
条件があますので詳しくはこちらをご覧ください。

福岡県建築住宅センター 耐震診断アドバイザー

耐震補強の補助金がある地域もあります。
お住いの市町村にお問合せされてください。


構造について

家の構造はいろんな種類があります。
構造によってリノベーションの向き不向きがあります。

構造を大まかに分類すると

・木造
・鉄骨造(軽量鉄骨を含む)
・組積造(コンクリートブロック造など)
・コンクリート造

の4種類に分かれます。

この中でリノベーション向き物件は木造です。
他の構造に比べ、構造体の交換がしやすいためです。
例えば土台が腐っている場所があった場合、
木造だと、そこだけ切り取って交換することができます。

ただし木造の中でもさらに種類があります。後ほど説明します。

耐久性の面で考えると鉄骨造やコンクリート造の方が有利です。
ただし、構造体の変更や補強がしづらいため、自由度は低いです。

構造の調べ方

法務局の不動産登記情報に記載があります。

木造の種類について

木造の中でも種類があり、中にはリノベーションが難しい場合があります。

・在来工法
・ツーバイフォー工法
・プレハブ工法

在来工法とツーバイフォー工法についてはリノベーションがしやすい工法になります。
一般的な木造住宅といえば在来工法がほとんどです。

注意が必要なのはプレハブ工法です。
この工法の場合はメーカー独自の工法で、いわゆる企業秘密の工法です。
家を建てたメーカー以外の設計者が扱うことはほぼできないと思ってください。
ただし間取りの変更のないリフォームでしたら、可能です。

工法の調べ方

新築時の工事契約書や建築確認申請の資料に記載があります。
もし資料が残っていない場合は建築士による床下や屋根裏の調査でほとんどの場合が判別できます。


増築について

今住んでいる家や中古物件を増築しようとする場合、いくつか注意が必要です。

・建築確認申請に関する手続き
・用途地域による限度

建築基準法という法律に関するものです。詳しく説明します。

建築確認申請に関する手続き

家を新築する際に、建築確認申請という手続きが必要です。
そして工事が終わったら完了検査を受けなければなりません。
どちらも建築主の代理となった建築士が
行政や民間の検査機関に対して行う手続きになります。

簡単に説明すると、
建築確認申請は家の計画が建築基準法などの基準を守っているかの図面のチェック。
完了検査は計画図の通りに工事がされたかの現場でのチェック。

しかし、リノベーションの依頼で調査をしてみると
建築確認申請は行っているが、完了検査を受けていないことが良くあります。

増築をする場合も建築確認申請は必要です。
(10㎡以下の増築の場合は申請が不要となる場合があります。)

ここで問題なのが、新築時に完了検査を受けていないと、増築の確認申請が出せないのです。
増築するためには、
手続き違反の報告→現況を調査し報告→役所の検査という手続きが必要になります。

現況の調査とは当時の計画図の通りに工事がされているかをすべて確認しなければならず、見えないところは一部壊すなど、かなり難易度の高い調査になります。時間もお金もかかるので、断念される方も多いです。

建築確認申請や完了検査の履歴を調べる方法

新築時の図面や契約書と一緒に保管されていることが多いです。
手元にない場合はお住いの行政で履歴を調べてもらえます。

福岡の場合は県土整備事務所の建築指導課で調べられます。
申請許可証や検査済証は再発行できませんが、
証明書を発行してもらえます。

用途地域による限度

都市計画区域という区分があります。
その区域ごとに土地の広さの何%まで建物が建てられるかが決まっています。
家の周りに余裕があるからと言って、必ず増築ができるとは限りませんので、
可能かどうか建築士に調べてもらいましょう。

ここでも注意することがあります。

カーポートや物置など屋根があるものは建物になりますので、先ほどの限度に含まれます。
また建物なのでもちろん建築確認申請の手続きの対象です。
本来はカーポートなどは許可が必要ですが、取付業者に認識がないのか、
無許可で設置されているケースが多くあります。

増築の際は、後から追加した建物は一度撤去して、
完了検査を受けた時の状態に戻さないと、増築の手続きができませんので注意が必要です。


まとめ

リノベーションは新築に比べると、コストを抑えつつ、自分好みの家に変えられるメリットがあります。しかし、残せるはずの部分に問題があれば、逆に費用がかかってしまう恐れがあります。
またどの建物でも自由に変えられる訳ではありません。

築年数がある程度耐震性能の基準になること、建物の構造や種類によってリノベーションのしやすさが変わること、増築ができるかどうかのポイントなど、リノベーション向き物件の選び方を説明してきましたが、専門家でないとなかなか判断が難しいかと思います。できれば物件を決める前に建築士に相談することをおすすめします。

リノベーションですてきな住まいを手に入れるため、少しでも物件探しの参考なれば幸いです。

福田建築設計室 一級建築士事務所
代表 福田 征央(ふくだ ゆきひろ)

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お気軽にお問合せください。


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