
屋根の軒先から壁までを軒の出と言います。私たちの設計では基本的にこの軒の出をしっかりつくるようにしています。理由は大きく二つあります。
日差しのコントロールと雨漏りリスクの軽減です。
日差しのコントロール
夏場の室内を快適にするには日差しを遮ることが大切です。軒の出が深いほど直射日光が室内に届かず、また窓の外に日影が多くなり、室温の上昇を和らげます。
冬は日差しが入らなくなるのではと思うかもしれませんが、大丈夫です。夏は太陽の位置が高いので真上から差し込むようになります。逆に冬は太陽の位置が低くなるので斜めから差し込むため、軒が深くても日差しが入ります。
具体的にはエアコンの冷房が必要な時期に日差しが直接入らないように軒の出や軒先の高さを調節して設計をしています。

冬は太陽の位置が低いので軒が深くてもたくさん日差しが入ります。
寒い冬はお日様の温かさを積極的に取り込みます。

雨漏りのリスクの軽減
雨漏りが起きる要因として3つあります。
・雨が直接掛かる
雨は通常重力で上から下へと流れますので、雨が掛からなければ雨漏りになることはありません。
・雨水が浸入する穴がある
雨が掛かる場所に穴がなければ雨は浸入しません。
・穴が室内までつながっている
穴があっても、室内に届く前に外に排出されるようになっていれば雨漏りにはなりません。

この3つの要因の一つでも防げると雨漏りはしないのです。
また雨漏りの事故が起きやすい場所というのもあります。窓周りやバルコニーです。
部屋の内と外がつながる窓は雨が浸入しやすい場所になります。またバルコニーは雨を一旦溜めるような形状になっていることや手すり部分や壁とのつなぎ目部分の防水処理の難易度が高く、穴ができやすい場所になります。正しい防水の工事はもちろんですが、軒の出や庇などで雨が直接掛からないようにすることもリスクを減らす上で大切です。
敷地の余裕の有無やデザイン性などで軒の出がない家も見られます。日射が入りにくいガラスや、トリプルガラスなど断熱性が高い高性能窓で日差しを防いだり、雨に対してはきちんと防水工事をされていると思います。でも雨は思わぬところから突然浸入してきます。
家は長く住むため、穴を完全にゼロにし続けることは簡単ではありません。雨が掛からないように工夫したり、雨が入っても抜けていくような構造にするなど二重、三重の対策が必要だと感じています。なので私たちの設計では日差しのコントロールと雨が掛かりにくいようにするため、なるべく軒の出を深くして、快適で長持ちする家をご提案しています。
